試合映像の振り返りによるコーチングで選手の“主体性や考える力”を向上させる!
パナソニック㈱の新規事業プロジェクト「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャー・カタパルト)」が考える力や主体性を育むための自動撮影・コーチングサービスを開発している。
名称は『Spodit』(スポディット)。現在、一般販売に向けて複数のサッカーチーム協力のもと、実証実験を続けている。
競合も多い市場で同商品はどのような差別化を考えているのか。
開発を主幹するパナソニック所属の杉岡将伍氏(写真右)に話を聞いた。
ーー「Spoditとはどういうサービスなのでしょうか?」ーー
「Spodit」は、サッカーチームに対し、三脚やタブレット等の撮影機器と、スポーツ心理学に基づいた映像を用いた振り返りメソッドを提供し、試合直後に俯瞰で撮れた映像を用いて振り返りを行うことで、正しい課題認識や、選手同士の共通理解を効率よく獲得することが出来るだけでなく、選手が自ら課題や解決策を考える力や主体性など、土台となる本質的な力を養うサービスです。
選手の競技力だけでなく、より本質的な力を伸ばすことを支援し、選手たちがスポーツがもっと好きになるようなサービスにしていきたいと考えています。
ーー最大の価値は選手の土台となる部分の成長ということですね。なぜ、スポーツ教育を題材にされたのですか?ーー
私自身、小学生から大学までスポーツに熱中していて、入社してからも元々何らかの形でスポーツに貢献できないかと思っていました。
そんな中でチームの練習や、試合の現場を見ていると、指導者からの一方通行な指導である「ティーチング」がメインになり、選手が受け身になってしまう状況が多いことに気が付きました。これは指導者側の経験値が高く、選手の課題に対する答えを持っているため、ついついその知識を前面に出し、接してしまうことが原因です。自分も少しだけ指導者をしたことがありますが、振り返れば「なんでやねん!もっとこうやろ!」と言っていたことを思い出します。でも他の指導者の方も私も少しでも上手くなってもらおうと思って指導していたつもりです、でもそれは選手の思考を狭めて、硬直的にさせてたんだなと反省しています。
もちろんティーチング指導が必要な場面もあると思いますが、基本的に双方のコミュニケーションは成立せず、受け身になれば、主体的に選手が課題を見つけ、解決しようとするといった力が上手く身に付かないことも多いのです。
その中でヒアリングを重ねていくと、やはり「主体的な選手になってほしい!言われたことをやるのではなくて、自分たちで考えられる力をつけてほしい!」と指導者は皆思っているものの、「具体的にどうすればいいのかわからないし、頭の中のプレーのイメージが異なるので、話がかみ合わず、腹落ちしない。けど無理やり自分を納得させて次に向かう」というような現場感溢れる課題が出てきました。
我々はこういった課題を改善できるようなサービスが作れれば、スポーツ教育のあり方をアップデートできるのではと考えました。
ーー具体的に練習や試合現場ではどのようなことをするのでしょうか?ーー
まず、「Spodit」で記録した試合や練習の映像を記憶が新しいうちに、メンバー全員で見て、振り返ります。それぞれの課題を見つけながら話し合って、実践。それをまた全員で見て話し合って…というサイクルを繰り返すことで、選手たちが主体的に学び合う理想的なコーチング環境を作ることができます。またそこに映像があることで、主観ではなく、客観的な情報をもとに、話し合いができるようになります。
また「Spodit」では撮影中に、小型のリモコンでボタンを押すと、そこにチャプターを残すことができ、試合後はすぐに振り返りたいシーンをその場で簡単に振り返ることが出来ます。
なので「あのシーンは確か前半15分くらいの・・・」と探す必要がないので、プレーの記憶が鮮明なうちに振り返りと対話が行えます。
これは家に帰って漫然と試合映像を観てるのとは訳が違いますよね。
ーーその場ですぐに観て、みんなで話合うというのが、特に子どもにとって非常にいいですね。ーー
そうですね、実際に検証現場では、子供たちも「もっと上手くなるために、強くなるためにどうすればいいかを考え、実践、
また振り返ってというサイクルを回すことで、課題が解決されていくことに楽しみを感じてくれて、もっとサッカーが好きになったと言ってくれました。
これは個人的にも嬉しかったポイントです。仲間と意見を出し合って、学びあうことが、内発的なモチベーションに繋がっているんだなと。
ーー今回、行っている実証実験について、もう少し教えてくださいーー
現在も複数のクラブチームに対し、お金を払ってもらいながら、実証実験をしています。
先ほど言った「映像を見る」「考える」「話し合う」「実践する」のサイクルを、スポーツ心理学の専門家と共に開発した振り返りプログラムを基軸に2か月程度実践し、どんな変化が子どもたちに起こるかをヒアリングや観察、アンケートから計測しています。
既に検証を終えた小学生チームでは、監督曰く「選手たちの練習や試合中の会話が明らかに多くなった」であったり、「目標を立てて、何をトライするか、トライした結果どうだったか、何が原因で、次はどうすればいいか、というような、PDCAを選手たちが中心になって回す意識」が非常に強くなったと高評価頂いており、実際に私が外から見ていても、2か月前は大人しめだった子も、自分の意見を非常にロジカルに伝えていました。
ーー確かに子供の頃にこういった経験ができるのは非常に良いですね。ーー
まさにそうですね。むしろ自分自身も子供の頃にこういうのがあったらなと思っている一人です(笑)
もっと面白かったのは、検証先の監督から「子供の変化というのは表向きで、実は指導者の変化を観察してたんじゃないの?」と言われました。
その監督は、この2か月で自分はどのようにして子供たちを導けばいいのか、どういう立ち位置でどういうアプローチをするのがいいのか、深く考えるようになり、自分のコーチングスタイルも大きく変化したと言ってくれたのです。やはり大人が変わらないと、子どもも変わりませんからね。そういう意味で我々は指導者の立ち振る舞いやコミュニケーションに関する内容も振り返りプログラムに入れ込んでいるので、選手も指導者も変化していけるように、設計しています。
ーーそんなSpoditが8月に広島にて「選手の主体性を育むコーチング」について、ゲストスピーカーを呼んでセミナーを開催するとお聞きしていますーー
セミナーというものを考えたのは、検証を進める中で、子どもの成長のためには、大人も成長しないといけないと強く感じたからです。
そこで、主体性とは何か、コーチングとは何か、どのように取り組むのかを風土として広げ、少しでも選手たちにとって良い土壌が出来ればと思っています。
そんな中でフレンドリースポーツさんと接点を持つ機会があり、我々の想いに共感頂いたこともあって、広島からこのムーブメントを広めていこう!と考えたのです。第一回は8月6日に開催予定なので、ぜひ記事をご覧いただいた方はご来場いただけたらと思います。詳細については、記事の最下部にURLを記載頂くようにしますので、そちらからご覧ください。豪華ゲストをお招きし、普段の指導現場に活きるような話をして頂く予定です。
ーー今後の展望があれば、お聞かせくださいーー
まずはしっかりと商品をブラッシュアップすること。そのためには、現場で使っていただきながら、ご意見いただき、アップデートをくり返すことが重要です。
世の中には色々なサービスがありますが、Spoditはより現場に寄り添った形で発展させていければと思っています。
もしSpoditに興味があり、使ってみたい!もっと詳しく知りたい!と思って頂ければ、ぜひSpoditと検索頂きお問い合わせ頂ければ嬉しいです。
また、個別にメールを頂ければ幸いです。 sugioka.shogo001@jp.panasonic.com
ーーSpoditがスポーツ教育の在り方を進化させる日を楽しみにしています。貴重なお話ありがとうございました。ーー
※記事に出ていたセミナーに関する概要、応募はこちら