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[MOM3952]岡山学芸館MF木村匡吾(3年)_「学芸館のチアゴ・アルカンタラ」襲名希望の“チームのエンジン”が強烈ミドルで先制弾!

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先制点となるスーパーミドルを叩き込んだ岡山学芸館高MF木村匡吾(右、6番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.26 インターハイ3回戦 中京大中京高 0-5 岡山学芸館高 徳島スポーツビレッジピッチB]

 小柄な身体に詰め込んだ駆動力抜群のエンジンは、チームを前へと牽引するための絶対的なパワーにあふれている。その上、時にはゴールまで陥れてしまうのだから、相手からすれば実に厄介極まりない。

「運動量を生かして、後ろでチームのカバーをしながら、積極的に前に行くプレーでも自分の良さを出していきたいですね。攻撃も好きなんですけど、今は守備の方が評価されているので、そこはもちろんしっかりやって、自分の好きな攻撃の部分もしっかり出せていけたらなと思います」。

『学芸館のエンゴロ・カンテ』改め、『学芸館のチアゴ・アルカンタラ』。勢い十分のアタッカー陣を中盤で操る、岡山学芸館高(岡山)の必殺仕事人。MF木村匡吾(3年=高槻ジーグフットボールクラブ出身)は全国の舞台でも、効きまくっている。

 中京大中京高(愛知)と対峙した3回戦。「結構前半から押し気味にゲームは進められたんですけど、バイタルでもっとテンポアップするところが、なかなかできなかったかなという印象でした」と高原良明監督も話したように、序盤から岡山学芸館が攻勢には出ていたものの、決定機までは作り切れず、少しモヤモヤするような時間が続く中で、突如として背番号6の左足が爆発する。

 35+2分。右サイドでMF田口裕真(2年)からパスを受けた木村は、前方を見据えるや否や、ペナルティエリアの外から躊躇なく左足を振り抜くと、その軌道は一瞬でゴールネットを貫く。

「たまたまなんですけどうまく蹴れたので、良い感じで入って良かったです。ああいうシュートはよく狙うんですけど、うまく入ったことはそんなに多くないので、嬉しかったですね」。満面の笑みを浮かべたスコアラーに、やはり笑顔のチームメイトが次々に祝福へ訪れる。

「もう少し早い段階で点は欲しかったですけど、木村が良いミドルシュートを決めてくれましたね」と指揮官が話せば、「最後のところで決め切れずというのが続いたんですけど、スーパーゴールで先制して、前半を終えることができて良かったです」とはキャプテンのDF井上斗嵩(3年)。このゴールが呼び水となり、後半に4点を追加した岡山学芸館は5-0で快勝。準々決勝へと駒を進める結果となった。

 忘れられない試合がある。昨年度の夏の全国大会。準々決勝の星稜高戦に木村もフル出場したものの、試合は1-2で惜敗。後半のアディショナルタイムに2点目を奪われたが、そこから1点を返し、さらに数度のチャンスを掴みながらも敗れた一戦は、チームにとっても、木村にとっても、自分たちを見つめ直す格好の機会となった。

「あの試合は何もできなくて、凄く悔しかったです。“あと一歩”が届かなかったので、去年を経験しているメンバーを中心に、練習から常に最後の細かい部分にこだわってやってきたと思います」。それからちょうど1年。“あと一歩”を埋めるために積み重ねてきた力を、ここまでは存分に見せられていると言っていいだろう。

 だが、ある意味で岡山学芸館にとっては、ここからがいよいよ“本番”。待ち焦がれたその舞台で躍動することが、あの日から送ってきた時間が正しかったことを証明する、唯一の方法。「去年はひたすら先輩に付いていくだけだったので、今年はしっかり後輩も引っ張っていきたいと思っていますし、先輩がやってくれたように、今回もベスト8まで来れたので、僕たちの目標であるベスト4以上まで行きたいです」と言い切った木村も、そんなことは十分過ぎるほどわかっている。

 参考にしている選手を尋ねると、面白い答えが返ってきた。「よく『エンゴロ・カンテっぽい』と言われるんですけど、僕的にはチアゴ・アルカンタラの方が好きなんです(笑)。でも、どっちも良い選手だと思うので。両方のプレーができたらいいかなと思います」。カンテとチアゴ・アルカンタラのハイブリッドなら、それはもちろん最強だが、ここは本人の意思を尊重する形で、『学芸館のチアゴ・アルカンタラ』を襲名してもらおう。

 準々決勝の意気込みを問われた木村は、力強く決意を口にする。「今のところ2試合連続で点が獲れているので、しっかりと次も主役の座を取って、チームを勝たせられたらなと思います」。

 飛び出した“主役宣言”が頼もしい。岡山学芸館が誇る中盤のキーマン。木村が搭載しているエンジンは、フルスロットルへと到達するための準備を着々と整えている。

(取材・文 土屋雅史)
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